第2部 第3章:次世代への引継ぎ(事業承継)第2節:後継者選びの現状と課題

【第2節】 後継者選びの現状と課題

1.事業継続の意向と後継者難

 

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規模別の経営者引退後の事業承継についての方針

  • 中規模企業の大半が事業継続を希望している。
  • 小規模事業者も約6割が事業継続を希望している。
  • ただし、「事業をやめたい」と回答した小規模事業者は約14%。

※この集計は「経営者の年齢が50歳以上の企業」を対象としている。

 

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小規模事業者の廃業理由

  • 廃業希望理由の半分以上は「後継者難」。
  • 後継者難の内訳は、「息子・娘に継ぐ意思がない」、「息子・娘がいない」。

「継ぐ意思がない」とありますが、じっくりと話し合ったうえでの結論なのか、疑問が残ります。はたして本当に「継ぐ意思がない」のか、「一定の条件が揃えば継ごう」と考えているのか、現社長と後継者候補という立場の対話と親と子という立場での対話が求められます。

2.承継形態別の現状と課題

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規模別の現経営者の承継形態

  • 小規模事業者は親族内承継が6割強を占める。
  • 中規模企業の親族内承継は4割強。つまり親族以外による承継が親族内承継を上回っている。

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中規模企業の親族/親族以外を後継者とする理由(複数回答)

  • 親族以外の選択理由で多いのは「役員・従業員の士気向上が期待できる」、「役員・従業員から理解を得やすい」。
  • 親族の選択理由で多いのは「血縁者に継がせたい」、「自社株式や個人保証の引継ぎが容易」。

中規模企業とはいえ、資本と経営とが完全には分離していない会社では、経営資産の引き継ぎ、つまり相続の問題は避けて通れないということです。

 

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規模別の親族に事業を引き継ぐ際の問題

  • 小規模事業者・中規模事業者ともに「経営者としての資質・能力不足」を挙げる事業者が多い。
  • 中規模事業者の約4割が「相続税・贈与税の負担」を挙げている。

後継者が、事業を引き継ぐタイミングで十分な経営者の資質を持っていることは稀でしょう。経営の経験を積む助走期間あるいは現経営者との並走機関を設けたいところです。だから事業承継は十分な期間をかけなければなりません。

 

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規模別の親族以外に事業を引き継ぐ際の問題

  • 借入金の個人保証の引継ぎや自社株式・事業用資産の買い取りを挙げる企業が多い。
  • 特に中規模企業では、個人保証と自社株式買い取りの問題が大きい。

 

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純資産規模別の親族以外に事業を引き継ぐ際の問題として、借入金の個人保証の引継ぎが困難と回答する企業の割合

  • 債務超過の企業は、個人保証を引き継ぐことが困難であると考えている企業が約6割。

債務超過以外を見ると、純資産の規模にかかわらず3割強の企業が個人保証の引継ぎを困難としていることに要注意です。

第2節のサマリー

  • 小規模企業では依然として親族内承継が多くを占めるが、経営者としての資質・能力不足の問題が大きい。
  • 中規模企業では、親族外承継が親族内承継より上回っている。親族外承継の問題としては、個人保証の引継ぎや自社株式・事業用資産の買い取りが大きい。
  • 中規模企業の親族内承継のメリットとして、自社株式や個人保証の引継ぎが容易であることが大きい(このメリットは小規模企業にも当てはまるだろうと推察されます)。